ホームForesight Journalコラム2030年までに爆発的に普及すると予測されているIoTとエッジコンピューティングとは

2030年までに爆発的に普及すると予測されているIoTとエッジコンピューティングとは

IoT(アイオーティー)は「Internet of Things」の略で日本語では「モノのインターネット」という意味です。PCやスマートフォンではない“モノ”がインターネットに繋がる仕組みのことで、すでに現状でも様々なIoTが登場しています。

外出先から電源をオンオフできるエアコン、高齢者を見守るため使うと家族に通知を飛ばす電気ポット、遠隔地の様子を映像で確認できる監視カメラなど、生活の様々なシーンにIoTは溶け込んでいます。

総務省の「令和3年版 情報通信白書」では世界のIoTデバイス数が2020年の253億台から、2021年が277.9億台、2022年が309.2億台、2023年が340.9億台と右肩上がりに増加していくと紹介されています。中でも「コンシューマー」向けと「産業用途」で大きな伸びが予測されています。

コンシューマーとは、インターネットにつながる家電、つまりスマート家電のようなIoTデバイスを指しており、産業用途とはスマート工場やスマートシティで活用されるIoTデバイスのことです。現在は「通信」つまり、スマートフォンがIoTデバイスのトップシェアを占めていますが、すでに飽和状態にあるので、今後は大きな伸びが期待できません。そのため将来は「コンシューマー」や「産業用途」に逆転されていきます。また、デジタルヘルスケア市場が拡大する「医療」やコネクテッドカーに代表される「自動車・宇宙航空」も高成長が見込まれています。

調査会社のREPORTOCEANは、世界の消費者向けIoT市場の売上高は、2021年に803.9億ドル(約9兆1400億円)で、今後2022年から2030年までの間、年平均14%ずつ成長し、2030年には2928億5000万ドル(約33兆3000億円)に達すると予測しています。北米の市場がもっとも大きいのは変わりませんが、成長率はアジア太平洋地域が最も高くなるとのことです。

REPORTOCEANは、2020年から世界を巻き込んでいるコロナ禍もIoT市場の拡大にポジティブな影響を与えたと分析しています。非接触型の決済方法が普及し、AIを活用したインテリジェント製品の市場が拡大したためです。

参照:REPORTOCEANによるレポート

IoTの課題解決にはエッジコンピューティングが欠かせない

勢いに乗っているIoTですが、課題もあります。まずは、ネットワーク負荷の増大です。現在でも280億台近いIoTデバイスがインターネットに接続して通信を行うので、莫大な量のデータが飛び交うことになります。現在の設備ではまかないきれず応答が遅延する可能性もあるため、通信インフラの見直しが必要になるケースも発生するでしょう。

すべてのデータをクラウドに送っていると、その経路のどこかでセキュリティリスクにさらされる可能性も高まります。特に、企業で運用する場合でも、IoTはPCやスマートフォンよりセキュリティが緩くなっているケースが散見されます。今の時代、セキュリティ問題が発生すると、大きな損失が発生したり、企業のブランドが毀損されます。

そこで、ネットワークのキャパシティとクラウドのセキュリティという2つの課題を解決するのが「エッジコンピューティング」です。

エッジコンピューティングの市場はここから急速に拡大する

「エッジコンピューティング」とはIoTデバイスやエッジサーバーなど、データが生成される場所の近くで実行する分散型コンピューティングの仕組みのことです。遠くの雲=クラウドに送るのではなく、現場の端=エッジで処理するというイメージです。

メインのシステムに全データを送るのではなく、生のデータを現場で処理するので、ネットワークの負荷を軽減できます。クラウドではなく、現場のシステムを使うので、遅延も最低限に抑えることも可能です。エッジで処理すれば、生のデータがクラウドまでの経路で漏洩するということもありません。IoTの課題が解決できるというわけです。

クラウドサービスの場合、障害が発生してダウンしてしまうと、すべてのユーザーが利用できなくなり、被害が大きくなります。エッジコンピューティングであれば、現場で動作するので共倒れを避けられます。これは、企業のBCP(事業持続計画)にも役立ちます。

EUは2018年に「EU一般データ保護規則」(GDPR:General Data Protection Regulation)を施行しました。個人情報を守るための法令で、データの保存場所の規制があります。別の国のサーバーで動作しているクラウドに個人情報を送信するのがNGになる可能性があるのです。そのため、ユーザーの住む国にエッジサーバーを置き、個人情報のデータ処理を行うといったニーズが高まっています。

エッジ処理を行うのはエッジデバイスです。PCもスマホもエッジデバイスですし、利用者をガイドするロボットも自動運転カーもエッジデバイスです。センサー類から情報を収集するシングルボードコンピュータもエッジデバイスです。もちろん、専用の高性能なエッジサーバーも商品化されています。

REPORTOCEANのレポートによると、エッジコンピューティング市場もIoT市場以上に急成長すると予測されています。2020年から2030年にかけて平均で年27.2%で成長し、2030年には328億1000万ドル(約3兆7200億円)に達すると見られています。

エッジコンピューティングにおけるAIの重要性

エッジコンピューティングのもう一つの特徴が、AI(人工知能)ととても相性がいいという点です。そもそも、なぜクラウドがここまで広まったのか、というとPCやスマホとは比べものにならないくらい高性能なコンピュータでデータ処理を行えるからです。当然、エッジコンピューティングではそのような膨大な処理を行うことはできません。

しかし、学習済みのAIであれば、エッジデバイスでスマートに処理することが可能です。自動運転カーで走っているときに子供が飛び出してきた場合でも、瞬時に判断できます。工場の生産ラインで不良品をはじくこともできます。

もちろん、AIの学習には膨大な処理が必要になりますが、これはクラウドで行います。クラウドのパワーで大量のデータから機械学習させたあと、そのモデルのみをエッジデバイスで動作させるのです。

エッジコンピューティングは分散型コンピューティングですが、クラウドのような集中型コンピューティングと相容れないわけではありません。エッジ処理を行った結果やヘビーな処理が必要な場合は、クラウドとデータをやり取りします。例えば、監視カメラの場合、エッジAIで不審者がいないかどうかをリアルタイムで確認し、検知したらクラウドに送信して人物照合する、といったことが可能になります。

IoTとエッジコンピューティングを支える5G通信技術

エッジコンピューティングが必要で、もっとも期待を集めているのが自動運転カーです。車載のカメラで撮影した映像をリアルタイムに解析し、自動運転してくれるのです。まさに社会が変革する製品で、世界中で開発が進んでいます。

自動運転技術は運転を支援するレベル1から完全に運転を自動化できるレベル5までありますが、日本では2020年にレベル3を実現しました。今後、高度な運転自動化を実現するレベル4やレベル5を目指すためには、まだクリアしなければならない技術的課題があります。

クラウドを利用する場合、例えば映像を送ってシステムで分析した結果をフィードバックしてもらうまでに1秒かかったとしましょう。実際、ネットワークの状況によっては数秒かかることもざらです。しかし、時速40kmで走っているなら、1秒間に11メートル以上走ることになります。突発的な事態にはまったく間にあわず、事故につながってしまうことでしょう。

自動運転カーが走る場合、膨大なデータが生成されると予想されています。インテルの試算では4テラバイト、ガートナーの試算では年間280ペタバイトを超えます。これは、1日当たり767テラバイトと途方もない大容量です。そんな車が何万台、何十万台と動き、全てがクラウドと通信していてはインフラがダウンしてしまうのは明らかです。

それを避けるために、活用されるのがエッジコンピューティングです。車載のコンピュータにより、カメラやレーダーから生成された情報をリアルタイムに処理し、安全な運転を実現するのです。

とは言え、自動運転カーが通信をしないで済むわけではありません。交通状況や現在位置はクラウドに送りますし、地図情報や渋滞予測などもダウンロードする必要があります。交差点を曲がるときにはカメラには写らない曲がった先の情報も必要です。

そこで活躍するのが5G通信です。第5世代移動通信システムである5Gは高速・大容量、低遅延、多数同時接続という特徴を持っています。4Gまでは通信速度が注目されることが多かったのですが、5GではIoTとエッジコンピューティングにおいては残りの2つが重要です。

通信の遅延は1msと4Gの10分の1、同時接続は1km2あたり100万デバイスと4Gの10倍になります。リアルタイムに情報を取得し、多くの人が集る場所でも高速通信が可能です。

自動運転で利用する地図は高精度な3Dマップなのでデータが巨大になります。そのため、現在のカーナビのように全データを端末に入れておくことができません。そこで、ロードサイドに設置したエッジサーバーから5Gでダウンロードしてくることになります。これも、エッジコンピューティングです。

IoT×エッジコンピューティングの現在と未来

エッジコンピューティングはすでに様々な領域で活用されています。例えば、農業。産業用ドローンを使って上空から撮影した画像をエッジで分析し、害虫が発生しているとか雑草が多い場所に向けてピンポイントで農薬をまくことができます。農地が辺鄙な場所にあると、高速通信が使えないこともあるうえ、ドローンの動作処理はリアルタイム性が重要なので、エッジコンピューティングが適しています。

小売業界では、無人店舗のカメラやセンサーで活用されています。人件費の問題だけでなく、コロナ禍で非接触、非対面というニーズが広まり、無人店舗への期待が高まっているのです。顧客は無人店舗で自由に商品を手に取ってバッグに入れるだけで、購入したものはエッジコンピューティングにより認識され、非接触での会計が可能です。

医療業界でもエッジコンピューティングやエッジAIが広がっています。ウェアラブルのエッジ端末では、計測される各種バイタルの状態から、次のアクションやアクションするタイミングを通知できます。エッジAIによる画像診断支援技術の導入が進んでいますし、コロナ禍においてニーズが高まった遠隔医療も普及しつつあります。

食品事業者の業界では以前より「HACCP(ハサップ)」に沿った衛生管理を実施する取り組みが行われています。その中で、例えば厨房の冷蔵庫や冷凍庫、フロアの温度や二酸化炭素レベルをセンサーで計測し、エッジゲートウェイで集約。PCやスマホからアクセスしてデータを可視化するといったことが可能になりました。冷蔵庫の閉め忘れなどを管理でき、食品の品質を保つことができます。
*HACCP:Hazard(危害)、Analysis(分析)、Critical(重要)、Control(管理)、Point(点)の5つの単語の頭文字に由来する、衛生水準を守るために必要な工程管理システム

また、ビルの事業者用の顔認証エッジデバイスも開発されました。ビルやフロアのエントランスゲートでスピーディな顔認証を行うソリューションです。マスク着用のままでも立ち止まることなくゲートを通過したり、売店や食堂で顔認証による決済が可能になります。

夢のような技術に聞こえますが、もちろんいいことばかりではありません。クラウドに比べて、エッジコンピューティングの構築は高く付きます。拠点ごとにハードウェアを設置するので、スケールするごとにコストが増大します。クラウドと逆の現象になってしまうのです。

また、IoT市場には様々なメーカーが参入しており、PCやスマートフォンのようなセキュリティが確保されていない製品が多く、不正アクセスの被害も広まっています。

とは言え、IoTとエッジコンピューティングの活用はDXの要でもあります。市場が広がるにつれ、コストは安くなっていくことでしょう。セキュリティ面でも、IoTデバイスメーカーの技術が向上していけば対応できますし、ネットワークごと守る方法もあります。いずれ、どちらの課題も解消されていくでしょう。

エッジコンピューティングが描く未来

エッジコンピューティングに近い将来期待されているのは、前述の通りなんといっても自動運転カーへの搭載です。次に、天気予報への活用も期待されています。地域ごとに気象情報を収集し、エッジコンピューティングで天気を予測するのです。膨大な情報をクラウドに集約すると、大きな地域でくくる必要がありますが、農業を営むに当たっては情報が足りません。その点、エッジコンピューティングであれば細分化した予報ができます。

小売りなどの業界では、自動化や無人化が進むでしょう。ユーザーの行動分析というニーズもあります。映像を分析し、性別や年齢、動作をデータ化しつつ、個人情報は除去してからクラウドに送るといったことが可能になります。他にも、人間が行うように、現場で速やかな判断が必要になるようなシチュエーションで活用されていくことでしょう。

エッジが広まるにつれクラウドと二極化するのではなく、融合して、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドへ進化していきます。クラウドとエッジを一貫したインフラとして活用するようになり、膨大なデータを簡単に扱えるようになります。

IoTとエッジコンピューティングはスマートビルディングやスマートシティといった未来の町作りに欠かせない技術となるでしょう。これからIoTやエッジコンピューティングといった言葉を見かける機会が増えていくことは確実です。どんな風に進化していくのか、目を離せません。

著者:ITライター柳谷智宣

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