ホームM's Journalコラム情報漏洩とデータ主権の懸念を払拭するAzure OpenAI Serviceの導入メリット

情報漏洩とデータ主権の懸念を払拭するAzure OpenAI Serviceの導入メリット

今や、生成AIの導入は企業の喫緊の課題となっています。特に「ChatGPT」のような大規模言語モデル(LLM)は、その応答能力の高さから多くのビジネスパーソンに業務効率化の切り札として活用されています。しかし、その手軽さと引き換えに、企業は「入力した機密情報が外部に漏洩してしまうのではないか」という情報セキュリティの懸念事項を抱えることになってしまいました。

確かに、ChatGPTやGeminiなどのAIサービスを利用する際、ユーザーが入力したデータが将来的にモデルの再学習に使われたり、サーバーが海外に設置されているために日本の法規制やデータ主権の観点から問題が生じたりするケースが懸念されます。特に、企業の競争力を左右する機密文書や個人情報を取り扱う場合、この懸念は決定的な障壁となってしまうのです。

このデータの学習については、オプトアウトできることもあります。有料プランであれば、学習させないことになっているケースも多いです。とは言え、大企業でも最重要機密である顧客の個人情報を漏洩する事例が後を絶ちません。万一、設定ミスで、入力情報が学習されていた、では済まないのです。

データをAIに学習されたからといって、即座に情報漏洩とはなりません。しかし、いつかどこかで、誰かの出力に機密情報が混じる可能性はゼロではないのです。入力した新製品の開発計画や顧客の未公開情報、あるいは財務データが漏洩しては洒落になりません。

例えば、2023年にはサムスンの社員が半導体のソースコードや会議の音声データなどをChatGPTに入力し、バグ修正や議事録作成を依頼しました。この時の情報漏洩は確認されていないのですが、サムスンはすぐにChatGPTの利用制限を行ったのです。他にも2023年3月には、一部ユーザーのチャット履歴や個人情報が他人に表示されるインシデントが発生しました。

ChatGPTは利用したい。しかし、セキュアな環境で、しかもデータは国内に置いておきたい。日本企業のこのような高度な要求に応えるため、現在、エンタープライズ領域で注目を集めているのが「Azure OpenAI Service」です。

RAGとAzure AI Searchで実現する「社内専用機」

「Azure OpenAI Service」を提供するMicrosoft
通常のChatGPTを業務利用する際、もう一つの大きな問題が、AIが学習していない最新情報や、企業固有の専門知識に対応できないことです。汎用的なLLMは、公開されている膨大なウェブデータで学習していますが、その知識は学習を終えた時点のもので止まっています。そのため、社内マニュアルや最新の業界動向、自社の特殊な業務手順といった情報については、的確な回答を生成できません。

無理に回答を求めると、AIがもっともらしい嘘をつく「ハルシネーション(幻覚)」が発生し、業務上の誤判断を引き起こす原因になりかねません。企業が生成AIを戦力化するためには、機密性を保ちつつ、かつ社内の独自情報を参照できる仕組みが必要になります。

企業が求める「機密性を保ちながら、社内情報に基づいた正確な回答を得る」という課題を解決する鍵が、Azure環境で構築されるRAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)の仕組みです。RAGとは、その名の通り「検索(Retrieval)」の機能を付加することで、「生成(Generation)」の精度と信頼性を高める技術です。

ユーザーが質問を投げかけたとき、生成AIモデルが直接回答を生成するのではなく、事前に定義された企業独自の社内文書やデータベースから関連性の高い情報を「検索」し、その検索結果をプロンプトに含めてAIに与え、回答を「生成」させるという手順を踏みます。

このRAGをMicrosoft Azure上で実現する場合、基盤となるのは「Azure OpenAI Service」と、検索機能を提供する「Azure AI Search」です。Azure OpenAI Serviceは、OpenAIのGPT-5などの強力なAIモデルを、Microsoftの堅牢なクラウドインフラの上で、ユーザー専用のプライベートな環境として利用できるサービスです。

Azure OpenAI Serviceの利用ポリシーでは、プロンプトや応答内容といった顧客データはモデルの学習には使用されず、完全に隔離されることが保証されています。さらに、RAGのキモとなる社内ナレッジベースは、Azureのセキュアなストレージ内に格納され、アクセス制御も厳密に管理されます。企業の機密データが外部に流出するリスクを最小限に抑えつつ、生成AIを自社のセキュリティポリシーに準拠させた「社内専用機」として活用できるようになるのです。

また、企業が生成AIの導入を進める上で、セキュリティと同じように重要視されるのが「データレジデンシー(データ所在国)」です。日本企業、特に金融機関や公共性の高い事業者は、取り扱うデータの物理的な保管場所が国内にあることを強く求められます。これは、他国の法規制の影響を受けずに、日本のデータ主権とプライバシー保護法制を遵守するために欠かせない要件と言えます。

Azure OpenAI Serviceでは、日本国内の「Japan East(東日本リージョン)」を利用できるようになっています。Azure OpenAI Serviceや、RAG構築に利用される各種のストレージ、データベースなどのサービスを日本のリージョン内で運用することで、企業のデータは国外に出ることなく、国内の厳格なセキュリティ基準の下で管理されることになります。

Azure OpenAI Serviceによるセキュアな生成AIサービス「MAKOTO」

ミツイワが提供するセキュアな生成AIサービス「MAKOTO」

このような企業ニーズとAzure OpenAI Serviceの技術的な強みを結びつけ、日本企業向けに最適化されたソリューションとして登場したのが、ミツイワが提供するセキュア生成AIサービス「MAKOTO」です。MAKOTOは、Azure OpenAI Serviceを基盤とし、前述のRAG構造をパッケージ化することで、企業がゼロからセキュアなAI環境を構築する手間と時間を大幅に削減します。

MAKOTOは顧客企業ごとに専用の環境が用意され、入力データが外部に漏れる心配がないのはもちろん、利用するAzureの基盤自体が日本のリージョンで運用されるため、データレジデンシー要件を満たしています。さらに、ミツイワが培ってきたインフラ構築のノウハウを活かし、企業の既存のID管理システムとの連携もスムーズに行えます。

加えて、MAKOTOにはさらに3つの機能が追加されています。1つ目は「ライブラリ・タスク連携機能」で、あらかじめ回答のひな形を紐づけておくことで、フォーマットを統一させ、チーム作業の一貫性と品質を向上させることができます。2つ目は「話者分離機能」で、会議などの音声を話者ごとに自動で分類し、議事録作成などを効率化します。3つ目は「音声録音機能」は、PCやスマホから直接音声を録音でき、音声データを手動でアップロードする手間を省きます。

業務でセキュリティと生成AI活用の両立が実現する未来

生成AIは確かに強力なツールですが、その力を最大限に引き出すためには、セキュリティという土台が揺らいではなりません。ChatGPTのようなオープンなサービスの手軽さや安価さに魅力を感じつつも、機密情報を守りたいという企業の要求は至極当然なことです。そして、その要求に応える解決策となるのが、Microsoft Azureの強靭なセキュリティと、RAG技術の組み合わせによって実現するプライベートなAI環境です。

企業独自のナレッジベースを学習データと切り離して活用できるため、情報漏洩のリスクを極小化しつつ、回答の信頼性と精度を飛躍的に高めます。さらに、日本のデータセンターを利用することで、国内の法規制やデータ主権の要件にも対応できるのは、グローバルなクラウドサービスの中でも大きなアドバンテージです。

ミツイワの「MAKOTO」のようなサービスは、最先端のセキュアなAIインフラを、個々の企業が複雑な構築プロセスを経ることなく、すぐに利用できるようにパッケージングして提供します。セキュリティを確保しながら、AI活用による業務変革を目指す日本企業にとって、信頼できるパートナーとなるでしょう。これから生成AIの本格導入を検討する企業は、いかに自社の資産を守りながら活用できるかという視点で、Azure OpenAI Serviceベースのセキュアなソリューションを検討してみてはいかがでしょうか。

 

著者:ITライター柳谷智宣

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ミツイワが提供するセキュア生成AIサービス

セキュア生成AIサービス「MAKOTO」

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