ホームForesight JournalコラムサブスクリプションがDX時代の標準的ビジネスモデルである理由 第1回

サブスクリプションがDX時代の標準的ビジネスモデルである理由 第1回

動画や音楽のネット配信サービスが増えるに従い、「サブスク」という言葉を聞くことが多くなってきました。サブスクは「サブスクリプション」の略で、元は雑誌などの年間購読や予約購読を指す言葉でしたが、今では「月額定額で見放題/聴き放題」の意味で使われています。

IT業界ではもう少し早くからサブスクリプションという言葉が使われていましたが、これはサブスクとは少し違う意味合いを持っています。(IT用語として使う場合、サブスクと略すことはあまり無いようです)今回のコラムでは、このサブスクリプションがDXと密接に関係しているという話を書いていこうと思っていますが、その前にサブスクリプションの歴史について振り返ってみましょう。

IT業界でサブスクリプションという言葉が使われ始めたのがいつ頃かというのは諸説ありますが、2000年代初頭にLinuxのディストリビュータが「サブスクリプション」という言葉を使い始めたのが最も早いようです。もともとLinuxはオープンソースのため無料で配布されていましたが、サポートもありませんでした。しかし企業がLinuxに目を向けるようになり、商用ソフトと同様なサポートを求める声が高まったため、一部のディストリビュータが企業向けの有償サポート(アップデート/バグフィックスやヘルプデスク、トレーニングなど)を月額課金ベースの「サブスクリプション」として提供を始めたのです。

これは商用ソフトで言うサポート・メンテナンスと同じ意味合いのものですが、商用ソフトが最初に永続的ライセンスの購入を前提としているのに対し、ライセンス購入の必要が無いということでメンテナンスとは違うものであるということを強調する意味で、新たな名称をつけたのではないかと推察されます。このシステムが、企業でのLinux採用を加速させたと言われています。
そして2011年に米ソフトウェア大手のAdobeが商用ソフトのサブスクリプションに踏み切ります。それまで30万円以上で販売していたパッケージソフトを、月額5千円で使い放題で提供したのです。最初に永続的なライセンスを買い取るのではなく、毎月の利用料に1ヶ月分のライセンスが含まれているイメージで、初期費用無しで使い始めることができ、しかも契約を続ける限りアップデートが受けられるというモデルは、分割払いとも違うものでした。

しかし30万円の売上が年間6万円になるわけで、業界では懐疑的な見方も多かったのですが、確かに一時的に売上は落ち込んだものの、2年後にはそれまでの売上を上回ったということです。これには、Adobeのソフトは高額すぎて一度買うとそのまま何年も使い続けるというユーザーが多かったという事情もあると考えられますが、それでも商用ソフトでのこの成功は大きいものでした。

Adobeの成功は、OSSが造り上げたモデルが商用ソフトにも適用可能であると言うことを示した事例で、大きな意味を持ちます。クラウドの普及によって「所有から利用」への流れが加速していたことも背景にあり、その後様々なクラウドサービスがこのモデルを採用するようになったのです。

この「初期費用無し、永続的利用権無し、月額課金、無制限のサポート」というモデルは、今後さまざまなモノやサービスの提供に広がるでしょう。なぜならこのモデルはユーザーにとって大きなメリットになるからです。初期投資が必要ないことはもちろん、定額であれば予算管理もしやすく、資産計上しなくて良いなどの財務的なメリットもあります。サービスが気に入らなければ他のサービスに乗り換えることも、以前よりも簡単にできます。

逆に、サービスの提供側は常にサービスを進化させ続けなければ、ユーザーから選ばれ続けることはできません。提供側の負担は増えますが、「サービスを常に進化させ、新しいサービスを速やかにユーザーに提供する」ことを続けることができれば、安定したビジネス基盤とすることができるでしょう。そして、企業の体質をそれに堪えられるように変革することこそが、DXの目標なのです。
DXの時代には、あらゆるものがサービス化されると言われています。すなわち、あらゆるビジネスにおいてサブスクリプションが標準的なモデルになる可能性があるということです。次回はこの点について、詳しく見て行きましょう。
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