ホームForesight Journalコラム今、最も注目されているメタバースの世界:最新技術の集大成

今、最も注目されているメタバースの世界:最新技術の集大成

昨年頃から注目を集め出した「メタバース」ですが、できたばかりの言葉のため未だに定義が曖昧な部分が残っています。というよりは、最終的なゴールは誰にも見えていないのではないでしょうか。

インターネットを例に挙げると、最初は情報の伝達が目的で始まったものの、その後ユーザーが増えるに従って利用形態が大幅に変化し、それに合わせて機能が追加されてきました。今のインターネットを30年前に予見することはできなかったでしょう。新しいテクノロジーとはそういったもので、今後どうなるかではなく、「今後どうしていきたいか」というベンダー側の意思、そして「どのように使いたいか」というユーザーの望みが重要なのです。その意味では、これからどんどん目的や形態を変えていくのでしょう。

メタバースについての現時点での最大公約数的な解釈としては、「VRなどの技術を使ってアバターとして参加するネット上の仮想社会のこと」というところでしょう。SF映画などではずいぶん前からこういった世界が描かれ、ゲームなどでは実際の活用も進んでいますが、技術が低コスト化し、誰もが手軽に参加可能になったことで一気に普及の兆しが見えています。昨年あたりは、コロナ禍におけるイベントの代替として、VR技術を使った仮想イベントが多く開催されました。

仮想世界のビジネス利用が現実味を帯びてきたのは、さまざまな周辺技術が整い、現実的なコストで利用可能になってきたためです。これらにはサーバーやデバイスの処理能力の向上、インターネット回線の高速化に加え、AI、IoT、5G、VR、ブロックチェーン、NFTなどの新技術が含まれています。メタバースは最先端技術の集大成ということができ、ビジネスの世界を大きく変える可能性を秘めているのです。昨年社名をMetaに変えた旧FacebookやMicrosoftなどのプラットフォーム企業は、将来的にはビジネスへの活用を見込み、莫大な開発費を投じています。

メタバースのビジネス利用とは

ビジネスの世界でどのようにメタバースが活用できるのかについては、現時点では実例が限られており、イメージするのが難しいのですが、コマツのスマートコンストラクションがひとつのヒントとなりそうです。

コマツはIoTという言葉が存在しない頃から建機にGPSや通信機能を持たせた先駆者として知られています。そして2020年のDXグランプリを受賞するなど、常にデジタル化の最先端を走っています。そのコマツが、最近打ち出しているのがスマートコンストラクションです。スマートコンストラクションについては、コマツが運営する公式YouTubeチャンネルの動画をご覧ください。

詳細は是非動画をご覧頂きたいのですが、簡単に説明すると、建設現場の人手不足を解消して効率化を進めるために、さまざまなデジタル技術を組み合わせる取り組みです。具体的には、ドローンによる現場地形の測量(IoT/5G)、データのクラウドへの転送(5G)、クラウド上に現場のマップを作り上げ(デジタルツイン)最適な施工手順の検討(AI)、建機や人員のスケジューリング/手配(AI、クラウド連携)までを行います。そして実際の施工においては、ベテラン作業員が遠隔で建機を操作する(IoT、VR、5G、AI)、あるいは経験の少ない作業員をAIがサポートする、という取り組みも行っています。

スマートコンストラクションがメタバースとして語られることはありませんが、現実世界のコピーを仮想世界内に構築し、デジタル技術を駆使して現実世界とうまく連携させて効率化を進めたり安全性を確保したりするという可能性を実感できるのではないでしょうか。

コロナ禍も移行を後押し

メタバースが注目されている理由は最新技術が身近になったことだと書きましたが、もうひとつ、新型コロナウイルスの感染拡大によるソーシャルディスタンスの確保や対面の制限が追い風になっていることも見逃すことはできません。リモートワークが推奨されていますが、リモートだけではコミュニケーションが不足すると考える企業は多い様で、感染が落ち着くと出社に切り替える企業も後を絶ちません。遠隔会議システムにVR機能を取り入れたサービスが開始されるなど、さまざまな可能性が模索されています。
また、先に書いたように、ベンダー主催のイベントなどは遠隔の開催が継続される可能性が高いと考えられます。開催側にとっては、会場代や準備コストの削減につながりますし、参加側も場所や移動の制約から解放され(海外のイベントなどにも参加しやすくなる)、聞きたいセッションが重なっても後で見返すことができるなど、リアルなイベントよりもメリットが大きいためです。

新たな決済手段

メタバースがこれまでの仮想世界と決定的に違うのは、以前も書いたように、新たな決済手段が可能になったことです。2003年にサービスが開始された最初の仮想世界であるセカンドライフでも、セカンドライフ内で通用する仮想通貨は存在しており、現実の通貨に換金することができましたが、今はNFTを使うことで現実の通貨と換金する必要は無くなり、他のメタバースとの間で資産を交換することもできるようになると期待されています。

NFTという新技術と、それを支えるブロックチェーンが導入されたことで、仮想世界内での取引を安心して行う事ができるようになり、仮想世界内での経済活動が活性化し、それは新たなビジネスチャンスを生む土壌となります。

さまざまな物理的制約からの解放

メタバースは仮想世界であるため、参加者が現実にどこから参加しているのかは関係ありません。そのため場所や時間、移動の制約を最小限にできるため、国際的なイベントや活動などでは大きなメリットがあります。また、実際の容姿や性別、国籍、学歴、年齢、育ち、コネの有無、年収などとも無縁でいられるため、究極の平等な空間ということもできます。また、障がいがあってもメタバース内では健常者と同じ活動を行うこともできます。このように制約の一切無い環境では、これまで不可能だった新たなビジネスが生まれる可能性は非常に大きいと言えます。

これまで見てきたように、VRゴーグルを装着して参加する仮想世界だけがメタバースなのではありません。ビジネスの側から見たメタバースは、現実世界の拡張であり、延長線上にあるのです。人々を物理的な制約から解放し、デジタル技術のメリットを最大限に活用して現実世界のさまざまな問題を解決できる可能性を秘めているのが、メタバースなのだということができるでしょう。メタバースがどのようなに発展していくのかは、私たちの発想にかかっているのです。

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