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電子契約システムで紙とハンコにさようなら

日本では会社でも生活の中でもハンコ文化が根付いています。宅配便の受け取りも申請書も契約書にもハンコを押します。業務でも稟議書や契約書をはじめ、様々な書類にハンコを押しています。

しかし、コロナ禍になると、紙の書類を直接やりとりすることができなくなり、ハンコ必須の業務は停止してしまいました。ビジネススピードの低下を受け入れるべきでしょうか?それともリスクを冒して従業員を出社させるべきでしょうか?

解決方法は簡単。ハンコをなくし、代わりに電子署名や電子契約システムを利用すれば、問題なく承認フローを回すことができます。今回は、ハンコ文化の現状、電子署名や電子契約システムの種類、そして電子契約システムの導入プロセスについて解説します。

政府も脱ハンコへ向けて動き始め、電子契約システムの導入を推進

会社の業務でも稟議書や申請書、契約書、届出書など様々な書類で押印が行われてきました。紙で印刷した書類に押印し、次の決裁者に回しているので、手続き一つに何日もかかることが当たり前でした。

以前から、ハンコが無駄どころか業務効率を低下させることがわかっていたのですが、すでに動いている業務を変える方が面倒で、なかなか商習慣は変わりませんでした。しかし、コロナ禍で大きな転機が訪れました。

出社が制限され、承認しなければならない書類が滞ってしまうようになったのです。決算など、どうしてもハンコが必要な業務のために、感染のリスクがある中、強制的に出社させられた人もおり、「ハンコ出社」が問題になったのです。

2020年、河野太郎デジタル相が主導し、行政手続きにおける押印の見直しが行われました。民間から行政への手続の中で、押印を求めている行政手続が1万4992種類もあったのです。このうち99%以上となる1万4909種類は認め印で、すべて廃止か廃止する方向で検討が進められることになりました。

とはいえ、すべてのハンコの意味がないわけでもありません。契約書など、本人が押した、と証明すべきものがあります。しかし、実際の業務フローに紙を回したり、物理的な押印という作業を含めると、業務効率は著しく低下してしまいます。そこで、活用されているのが電子契約システムです。

ハンコを電子化すると言っても、いくつかのパターンがあります。宅配便の受け取りや請求書に押すだけのハンコであれば、そもそも電子契約システムを使う必要がありません。単にハンコのような画像を載せればいいので、自分で作ってもいいし、電子印鑑作成サービスを使ってもよいでしょう。実際のハンコを紙に押し、その印影をスキャンする手もあります。

契約書などで利用するなら、本人性と非改ざん性を担保しなければなりません。本人性とは本人によって署名されていること、非改ざん性とは契約書が改ざんされていないことです。従来は、紙に押していること、そして印影を比較することで本人性と非改ざん性を確認していました。この両方をデジタルで担保してくれるのが、電子契約システムです。

電子契約システムにも実印と認印のように、役割が異なる仕組みが存在します。実印のように、自治体に印影を登録しておき必要な時に印鑑証明書を使って照合するような仕組みを、電子契約方法では「電子署名」と呼びます。一方、契約書に押印する時に使う認印のように、自分が押した、ということを表すために使われるものを「電子サイン」と呼びます。

電子署名

電子署名は第三者機関である認証局に身元を証明し、電子証明書を発行してもらいます。その際、公開鍵と秘密鍵を交付してもらい、その鍵をもって契約書などに電子署名を行います。契約相手は認証局に照会することで、本人が署名していることを確認したり、自分も署名したりできます。

電子サイン

電子サインは電子メールやIPアドレス、パスワードなどで本人確認を行い、署名した日時を記録し、契約書が改ざんされていないことを証明します。

電子サインよりも電子署名のほうが厳重に確認する分、信頼性も高いのですが、コストも手間もかかります。そのため、電子署名はM&Aなど、重要な契約にのみ利用し、取引基本契約や秘密保持契約書、雇用契約といった一般的な契約に関しては電子サインを使うのが主流となっています。

電子サインの法的効力とメリット、コスト感

仕事で使うのであれば、比較的簡単に使える電子サインが法的効力を持つのかが気になるところでしょう。

2020年5月、法務省は「サービス提供事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービス」を使った電子サインでも、取締役会議事録への記名押印に代わる措置として有効だという解釈を公開しました。それまでの法務省は、電子サインが有効であるとはっきりさせずグレーだったのですが、これでクリアになった形です。

そして、これは議事録への署名だけに留まる話ではありませんでした。議事録への署名を定めている会社法施行規則225条2項の「電子署名」の定義は、ほかの条文の電子署名の定義とほぼ同じです。つまり、これまで電子署名として扱われていた多くの部分でも、電子サインが使えるようになったと考えられます。まだ、従来型の電子署名を求める手続きもあるのですが、これも時代に合わせて変化していくことでしょう。

電子サインを導入するメリットはとても大きなものになります。

メリット1:業務フローの効率化

まず、紙の書類ではなく、PDFファイルを利用するので、紙や印刷コストが不要になります。デジタルで業務フローを進められるので、リモートワークにも対応できます。デジタルだと一瞬で次のフローに進むので、ビジネススピードも格段に向上します。

メリット2:コストダウン

取引先や顧客などに契約書などを送っていた場合、紙を印刷して折り畳み、封筒に入れて郵送するという手間が不要になり、封筒代も切手代もなくなります。また、紙の契約書をファイリングする手間や長期間にわたり保管するスペースを確保するためにかかっていた費用も不要になります。そして、もっとも大きなコストダウンが期待できるのが印紙代です。

例えば、契約書に記載されている契約代金が500万円を超えて1000万円以下なら1万円、1000万円を超えて5000万円以下なら2万円の印紙代がかかります。しかし、電子サインを利用すれば印紙代は不要です。筆者が以前取材した企業は、年間6万件の注文書を電子サインに切り替え、年間6000万円ものコストダウンを行っていました。

電子サインが使える電子契約システムはたくさんあります。現在の主流はクラウドサービスで、契約書の作成からサインの依頼、法的拘束力のある電子サイン、データの保管といった一連の機能を備えているところがほとんどです。大手のサービスでは、電子証明書を利用する電子署名にも対応しているところもあります。

料金は機能や利用人数によって大きく異なりますが、数千円~数万円の基本料金に加えて、1件の契約につき数十円から200円程度のコストが発生するサービスが多いようです。紙や印刷、郵送のコストや印紙代を考えれば、そこまで大きな負担とはならず、多くの場合はコストメリットが発生することでしょう。

メリット3:コンプライアンスの強化

紙の書類は、紛失・流出・改ざんなどのリスクが伴いますが、電子サインを使った電子契約では、ファイルへのアクセス履歴を残すことができるため、内容が改ざんされても証拠が残るため、契約上のトラブルを防止できます。

また、セキュリティが担保されたサーバーに保存することで、流出、紛失なども防ぐことができコンプライアンスの強化にもつながります。

電子サインサービスの導入と活用までのプロセス

電子サインサービスはいつでも手軽に契約できます。しかし、電子サインの導入を成功させるためには、ステップを踏んで準備を行う必要があります。

ステップ1:業務の棚卸

まず、業務の棚卸を行います。どのような時に電子サインを利用するのかを決めるのです。棚卸することで、不要な承認フローを外すことができれば、業務効率の改善も同時に実現できます。承認者の流れも考え直し、可能であれば簡素化しましょう。いくらデジタル化するとはいえ、無意味に複雑なフローを残すのは避けたいところです。

企業規模が大きい場合、すべての業務フローを棚卸するのが難しいこともあるでしょう。そんな時は、ハンコを押す負担がもっとも大きい業務から電子サイン化していく手があります。まずは、導入効果が大きいところをデジタル化し、徐々に電子サインを広めていくのです。

ステップ2:サービスの選定

次に、電子サインサービスを選び、予算を確保します。電子サインができるクラウドサービスはたくさんあります。電子サインの機能に関してはどれも備えていますが、スマホ対応やOffice連携、多言語対応など、使える機能が異なります。料金やサポートも比較し、最適なサービスを選びましょう。

ステップ3:社内への周知と承認

業務フローを整備したら、社内規定を改定したり、社内に告知します。どの業務のデジタル化でも起きる問題ですが、社内に反対勢力が生まれることがあります。そんな時、社長からのトップダウンで強制する手もあるのですが、粘り強くその人たちにメリットを訴求する方がスムーズに活用が広まります。
社内勉強会を開催し、実際に使ってもらうことで、紙とハンコより電子サインのほうが便利だということを体感してもらいましょう。自分のメリットを感じてもらえれば、使ってもらえるようになるはずです。

電子契約システムの普及により脱ハンコの動きは今後も加速する

脱ハンコの動きは今後も加速していきます。グローバル化という点でも業務効率化という点でも、紙とハンコを使い続けるメリットはありません。ペーパーレス化やコスト削減を実現したうえ、例えばコロナ禍でも業務を遂行できるというBCP(事業継続計画)にも役立ちます。まだ社内で紙が飛び交っているなら、電子契約システムの導入を検討することをお勧めします。

著者:ITライター柳谷智宣

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