ホームForesight JournalコラムWeb3はメタバースのことでは無い 社会とインターネットを変えるDAOとは

Web3はメタバースのことでは無い 社会とインターネットを変えるDAOとは

昨年末くらいから急速に注目を集めているWeb3ですが、情報が一気に氾濫したため、その本質や特徴について、あちこちで混乱が見られるようです。特に、同じブロックチェーン技術をベースとし、先行して話題になっているメタバースと同じ文脈の中で扱われることが多いため、Web3を「なんだか新しそうだが、要するにアバターを使った仮想空間のことでは?」というイメージを持っている人も多いようです。しかし、これらは本来は別々のものであり、そこを押えておかないと、Web3の本質や社会へのインパクトを見誤ってしまうことになりかねません。

全体的な位置づけで見ると、Web3は「次世代インターネット」と言われるようにインフラに近い部分を指す言葉で、メタバースはWeb3によって実現できるNFTなどの要素を含み、5GやVRなど他の技術も最大限に取り込んで、新しいユーザー体験(UX)を提供するためのプラットフォームということができます。

Web3、Web3.0、DAO、NFT、ブロックチェーンの関係

ここで、用語の定義と関係性についてもう少し説明しましょう。特に、Web3とWeb3.0については混乱が見られます。

Web3についての説明は「ブロックチェーンを基盤とした分散型の次世代インターネット」とするのが一般的です。そして「Web3.0とも呼ばれる」などと、Web3とWeb3.0を同じ物として取り扱うことが多い様です。一方で、一部には「Web3.0はセマンティックWebのこと」という議論もあり、この違いは曖昧なままです。しかし、現実には後者の意味が議論されることはほとんど無いため、このコラムではWeb3とWeb3.0も同じものとして扱い、Web3と表記します。

ブロックチェーンはビットコインが取引の合意形成のために採用した技術で、多くの仮想通貨が同じ(もしくは似た)技術を採用しています。その後、この仕組みを拡大して分散型アプリケーションやスマート・コントラクトを実現しようとしたのがイーサリアムです。以前にこのコラムでも紹介したNFTや、後述するDAOなどは、このスマート・コントラクトを使って実現できたアプリケーションです。

Web3の語源とスマート・コントラクト

Web3という言葉がどのようにして生まれたかを見れば、Web3の本質がわかるはずです。Wikipediaには「Web3という用語は2014年にイーサリアムの共同設立者であるギャビン・ウッドによって作られ」と記載されています。そして、イーサリアムの項には「分散型アプリケーション(DApps)やスマート・コントラクトを構築するためのブロックチェーン・プラットフォーム」として開発されたと書かれています。イーサリアムは、この「分散型アプリケーション」「スマート・コントラクト」によって実現される新しい組織形態として、DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)を提案しました。

イーサリアムの共同設立者がWeb3という用語を作ったということは、Web3はイーサリアムの理念を含んだものであるはずです。つまり、上の定義の「分散型アプリケーション」「スマート・コントラクト」をベースにして、それにより可能になるNFTやDAO等がWeb3の基本的な構成要素になっていると考えるべきでしょう。

イーサリアムを、ビットコインなどと同じ仮想通貨と考えている人は多いと思いますが、イーサリアムはインターネットの使い方、ひいては社会構造までを変えうるプラットフォームとして構想されたものであり、イーサという仮想通貨は、そのプラットフォーム上で稼働するアプリケーションのひとつに過ぎないのです。

組織運営を自動化するスマート・コントラクト

組織とは、ある側面からは「契約(約束)の集合体」と見ることができます。雇用側は一定の対価を支払う約束(雇用契約)で従業員を雇い、従業員は一定の条件下で求められた労働力を提供します。労働力の提供においては、雇用側が具体的な目標を定め、従業員はそれを達成するという約束(契約)に基づくものです。労働が適切に提供され、目標が達成されたと評価されれば、対価(給与)が支払われます。

スマート・コントラクトは、これらの契約をデジタル化して、これまでの紙や口頭による契約を精緻化し、自動化することを目指したものです。これが実現すると、場所や時間に囚われない組織運営が可能になります。

現在多くの組織などで起きている雇用上の問題は、こういった「契約」が曖昧であることから起きていることも少なくないのではないでしょうか。業務の目標設定が曖昧なのに成果だけを要求する、きちんと成果をあげているのに思ったほど給与があがらない、こんな仕事は入社時の説明にはなかった、などといった不満・トラブルは、契約が厳密であればある程度避けることができます。しかし一方で、人間の行動をいちいちすべて定義するのは、今のやりかたでは実現可能とは言えません。契約の自動化は、こういった問題から社会を解放できる可能性を持っているのです。

※注:説明のために組織運営を例に使っていますが、スマート・コントラクトの対象は組織運営や雇用に限りません

DAOがインターネットと社会を変える

では、DAOはどのようにしてインターネットと社会を変えるのでしょうか? これについてもさまざまな予想・可能性がありますが、代表的なものを2つご紹介しましょう。

ひとつは、分散化によってGAFAMのようなメガプラットフォーマーの力を削ぐことができると期待されていることです。インターネットは、元々分散した平等な参加者が皆で作る共同体でした。しかし今ではメガプラットフォーマーがトラフィックの大半を握り、ユーザーを囲い込んで個人データを収集し、それを基にさまざまなサービスを提供することでさらに寡占化が進む、という状況になっています。DAOによって、これらに対抗しうる(分散して平等な)コミュニティが沢山生まれ、相互に連携することができれば、インターネットの主導権をメガプラットフォーマーからユーザーに取り戻すことができるのです。

もうひとつは、ネット上で完結できる、まったく新しい組織運営が可能になる可能性です。従来型の組織には、「雇う人と雇われる人」あるいは「方針を決める人とそれに従う人」といった分業体制があります。会社に「入社」したり、「指示を受けたり」して求められた成果をあげ、その報酬を得るのです。

しかしネットワーク上に構築されるDAOでは、全員が平等な参加者です。その組織への参加、退出は自由で、誰の承認も必要ありません。参加者は自分で自分の仕事を決め、「こんな仕事をxxまでにするから○○の報酬が欲しい」とコミュニティに提案します。そこで皆から承認されれば、成果をあげて報酬を得ることができます。この場合の報酬は、「トークン」という形式で支払われることが想定されています。トークン(NFTもトークンの1種です)は仮想通貨そのものというわけではなく、ストックオプションのようなイメージで、すぐに換金することも、持っていて値上がりを待つこともできます。(現実にはさまざまな法規制があり、できないこともあるようです)「雇う人と雇われる人」といった上下関係は無く、自発的な参加者のみにより構成され、収入差や査定に関する不満も存在し得ず、真の成果報酬が実現できます。社会へのインパクトは非常に大きいものになるでしょう。

Web3やDAOを構成する技術にはまだまだ不安定なものもあり、社会全体に普及させるためには法改正やさまざまな安全措置なども今後必要になります。しかしその可能性を追求することで、大きな変革が可能になるのです。

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