【2010年12月2日】 |
「自治体クラウドの考え方」前回5回目でも説明しましたが、平成24年7月の「住民基本台帳法」に関する改正を機に、地域情報プラットフォーム化を推進する動きが顕著になってきています。この中で地方自治体においては、地域情報プラットフォームを共通基盤として、様々な社会的IT基盤、プライベートなIT基盤を連携することにより、社会全体として効率よく、安全で便利な、インターネット上で動くメカニズムを国の構想として推進しています。また行く行くは各地方自治体が個別に情報投資をして調達をすることなく、利用費用のみを必要に応じ支払う、公的アウトソシングサービス(所謂パブリッククラウドサービス)型でのITサービス全体事業構造に持っていこうと考えています。しかしながら、その前に整備が必要な、一千七百数十ある自治体の標準化が進行中であり、大規模自治体ほど独自スクラッチによるシステムでの稼働が顕著であります。この状況が大幅に改善されなければ、地域情報プラットフォームを共通基盤とした、地域全体が連携された中での完全オープン化され、効率のよい統合運用は、現段階では困難です。前回も申しましたが、各自治体ごとの課題は、少しずつ異なります(当事者である自治体からすると大きな違いであると考えている場合が多い)ので、少なくとも基幹システムについては、個々のエゴを払底して、地域情報プラットフォームに準拠した行政統合パッケージ(ERP)を、カスタマイズを極小化した上で導入(調達)していくのが良いと思います。この行政統合パッケージ(ERP)が、システム全体(アプリケーション)の共通基盤としての役割をすると考えるのが最も妥当性があります。つまり、情報システム整備の一歩をそこに置くことで、認証、業務標準化、他システムとの連携、マルチベンダー化した他ベンダーのシステムとの連携、各種データベースとの連携、必要とするアウトプットを必要な時に、必要な場所で、必要な量だけ、取得することが可能となります。 また広域化についても、他自治体との共同利用が可能な形式での連携は、少なくとも地域情報プラットフォームに準拠したシステムが、それぞれの自治体に導入されていなければ、不可能です。その意味でも段階を踏んで、標準化、共通仕様化を推進する事が重要です。 ここで出来上がったシステムを、地域IT事業者を核とした統合的運用へと移管することが第2段階です。情報システム活用は、統合的運用が最重要です。庁内個別的運用は、どうしても時間の流れとともに、個別化(個性化)が進行し、素人運用による効率の悪い(パフォーマンスがだせない、トラブル解消に時間とコストがかかる)運用メカニズムが生まれます。ここでパッケージベンダーにシステム運用のノウハウを開示させ、地域IT事業者の教育を仕様に織り込んだ上で、人材を育成しながら地域密着型運用センターを共同で構築した上で事業を推進させることが最善です。 上記第1段階、第2段階を踏まえて初めて、トータルに戦略的アウトソーシングを行える土壌ができると考えるのが良いと思います。「クラウドサービス」は、インターネットを利用した戦略的アウトソーシングであります。将来的には自己投資を伴わない、利用者が必要に応じ対価を払う形式に発展していきますが、現段階では、現在のシステムの整備、運用整備が最優先されます。 図は、全業種におけるクラウド利用に向けた、立ち位置を表しています。図下側一番目の枠内で表現しているのは、1つの自治体において、システムと機器及び運用は、サイロ型になっていることを表しています。つまり一つの自治体の中でも複数のシステムがサイロのように単独で、何本も稼働しているという状態にあります。今まではこれらを何とか連携しようとして、莫大な投資をしてきたという経緯があります。この状態での問題点は、開発思想がベンダー毎の特別なOSに依存し、必要なアウトプットを全て作り込んでニーズを満たすという形式に陥りがちであり、ベンダーロックインになりがちで、独自仕様から抜け出すことができない所にあります。また高コストとなり、データーベースを中心とした連携性が脆弱となります。
右側次の枠は、上記までの整理で、アプリケーション(行政統合パッケージ、内部情報系パッケージなど)から下位のレイヤーを共通基盤上に載せ、統合的に運用を行う状況にかえた場合を表したものです。これにより、ユーザー要求をできる限り活かしながら、独自OSに依存しないメカニズムを個別自治体で導入する事が可能になります。また地域IT事業者をこの段階で参画させ、運用ノウハウ、業務知識を身につけさせながら高度な運用技術(SLAなど)導入へとシフトしていくことがめざせるようになります。 更に右側の枠に行くと、全体としてバランスの取れたアウトソーシングが可能となり、シェアードサービスの骨格が出来上がります。ここで初めてプライベートクラウドとしての、第1歩が完成します。周辺個々の自治体においても同様の発想で、全体が進行する事により、複数の自治体が共同で利用することへの、可能性が見えてきます。 「自治体クラウド」は、この段階に入って初めて住民サービスを起点とした、効率化、TCO削減を同時進行的に可能ならしめるものになっていきます。 クラウド化は、自助努力による、標準化がカギとなります。標準化、可視化、が進行すればするほど、クラウドサービスの良さが享受されます。将来のパブリッククラウドは、現在の情報システム利用環境、考え方を払底しない限り、何時までも自分たちのものになりません。 |
著 者 |
株式会社流通戦略総合研究所 代表取締役 |